2019年10月27日日曜日

NobleAudioの完全ワイヤレスイヤホンFALCONはフラッグシップを音を持って産まれた?


「NobleAudioがワイヤレスイヤホンを発売する。」

これだけでイヤホンファン、オーオタ諸氏はドキっとしたことでしょう。

超高性能イヤホンメーカーが自社ハイエンドモデルの帯域バランスを元にワイヤレスイヤホンを本気で作ったようです。

このFALCON。結論を言うと過去所有していたワイヤレスイヤホン、ワイヤレスレシーバーを超える最高の出来、どちらが良いという感想にならないほどに
「NobleAudioが作ったNobleAudioのサウンドシグネチャを持ったワイヤレスイヤホン」
でした。

正直、同社初めてのワイヤレス、しかも完全ワイヤレス(英語圏だとTruelyWirelessと言ったりするらしい)こんなにNobleAudioの音になるとは思っていませんでした。

一言で言えば同社のフラッグシップモデル、KHANに非常によく似たバランスに元気さ・明るさを足したような音です。



Noble Audioは米国に本拠地を構える高性能イヤホンメーカーです。

オーディオロジスト(聴覚博士・医師)であるジョン・モールトン博士が設計し、明確なメーカーの音(サウンドシグネチャーといいます)を持ち、数々の名作と言われるイヤホンを開発しています。

Noble Audioとは - Noble Audio Japan

高性能イヤホンメーカーというだけあって、メインラインナップであるマルチドライバー機は最も安いモデルで50,000円スタートという一般的に「高額で高性能なイヤホン」を作るメーカーです。

その Noble Audio が 20,000 円に満たない(同社としては)低価格で、しかも同社初である電子部品を含めたデジタル製品を満を持して発売しました。

全ては理想の完全ワイヤレスイヤホンのために - Noble Audio Japan

これがクラウドファンディングで先行入手ができ、本体やケースの紛失に対し一度だけ無料で交換サービスを受けられるのなら出資しない手はないでしょう。

無線でも超安定!完全防水&aptX対応|理想を追求した完全ワイヤレスイヤホン - Makuake

そして待望だった FALCON が到着して3日。音も落ち着き、音切れやバッファズレによる回復など一通り確認出来たのでレビューにしたいと思います。

ちなみに、本レビュー内で「 KHAN に似ている」というワードが頻出します。

Noble AudioのKHANを買ってわかったまさかの弱点と最高の音楽体験 - devlog.grim3lt.org

これは発表時のインタビューでジョン・モールトン博士が言及していたようで、有線イヤホンの最新モデルを協力工場に持ち込んで帯域を計測し、それらを元にチューニングを繰り返したとのことです。

Noble Audio「FALCON」10月25日発売、“Wizard”チューニングの秘密が明らかに - Impress AV Watch


全体的な印象


パッケージのトータルとしてすべて最高ではなく、最善と最良を目指しているように感じました。
  1. ハイエンドで培った同社のサウンドシグネチャーの表現を、ドライバーだけでなくDSPを用いてデジタル的に表現していること。
  2.  ワイヤレスイヤホンという制限されたものの中で、最低域を削り、サウンドとしての聞こえ方を重視するチューニングをしていること。
  3.  絶対に切断されない無線環境はないので切断を含む無線環境の例外を極力最短で回復するように努めている。
切れない、音がいい、時流にのせたチューニング

ではなく、

切れるけど回復する、理論的にできる限り正しく音を届ける、メーカーが培ってきたメーカーの音をユーザーに届ける

という意欲があるように感じました。
非常に野心的な試みだな、と実際にFALCONを使用して感じました。

装着感

イヤーピース(イヤーチップ)で大きく変わります。

純正eProは、音の出方が素直で装着時の安定感は高いのですが、が、傘部分のエッジが外に開くテーパー状のため人によっては長時間で耳に刺激を感じるかもしれません。
当初、私は右耳が結構かゆいことがありましたが、装着場所や角度が次第に慣れてくるため、高域の素直さ、低域のバラけ方が非常によいeProをそのまま利用しています。

ステムが長く、イヤーピースの装着スリットが短いため利用できるイヤーピースは選びそうです。

帯域バランス

帯域のバランスは弱ドンシャリでしょう。

重低域 ■■■■■■■■□□
 低域 ■■■■■■■□□□
 中域 ■■■■■□□□□□
 高域 ■■■■■■□□□□

こんな感じでしょうか。
10段階評価の満点法というわけではなく、全体のバランスとしてこんな感じかと思います。

ちなみに、ドンシャリではあるんですが低域、中域の使い方が非常に上手でクールではなくウォームに振っているように感じます。

ウォーム □□□■■|□□□□□ クール

こんな感じでしょうか。

Twitterなどでは非常に強ドンシャリで高域に寄っているという意見もそこそこ見かけていました。

が、実はこの傾向は今回いろいろ試した結果次の2つを実施すると大きく改善できたので共有していきます。
  1. とりあえず30時間くらい使って愛でる
  2. aptXを切る(使用しない)

詳細は順番に説明していきます。

まずは騙されたと思っていいので

30 時間音を鳴らし続けよう!
aptXをOFFにしよう!

です。約束です。


1. とりあえず30時間くらい使って愛でる

賛否両論あるオカルティック技法エージングをまず真っ先に取り上げていきます。

こんな話をするとアレなのですがこの FALCON 、鳴らし始めてから30時間くらいの間は音が刻々と変化していきます。
ちなみに Noble Audio は SAGE と KHAN を持っていますが、特に KHAN も非常に変わったのでまあこんなもんかなぁと思ったりします。

さて、どう変わるか、ですが私は次のような感じで変化を感じました。
なおすべて「aptXはONの状態」です。
今はOFFで使っていますがそれはまた別途。

0 - 10 時間
箱出し直後からなんとなく奥行き方向に広さを感じる。
きらびやか。弱ドンシャリというよりドンシャリ。
10時間付近から刺さる音が目立つ。特にアニソンやアイドルものJPOPは刺さりと低域不足を感じる。

10 - 20 時間
刺さり音が落ち着いて繊細な中高域が聞こえるようになる。この時点で突然奥行き方向に空間が広がる。
ザラザラしていた中高域が落ちついたので、細かい音が埋もれなくなったため空間の表現が更に向上した。
途中、15 - 20 時間辺りで低域が全体を覆うように鳴る。少し低域過多に寄った。

20 - 30 時間
低域過多で全体を多い気味だったボワンと制動不足感のあった音が落ち着く。
全体的なバランスが弱ドンシャリで、空間表現と音の距離感がよりはっきりする。
Noble AudioのフラッグシップモデルKHANに似たようなバランスでなるようになったのはこのあたりから。

2. aptXは早々にoffへ!

当初はaptX使っていました。

というかAndroidの場合、初めてペアリングしたオーディオ機器は、その機種が持つ最も高ビットレートなCODECを選択します。

FALCONをあれこれ利用中「そういえばaptXってノイズが乗ってるという検証記事を読んだな。」と思い出しaptXをOFFにしたという経緯でした。

【藤本健のDigital Audio Laboratory】BluetoothのaptX音質を再び検証。SBCとの違いを波形で比べた - Impress AV Watch

その記事によればaptXはまんべんなくノイズが乗っているとのことでした。

耳に直接聞こえいるいないにかかわらず、全体に乗るノイズは小さい音の表現に覆いかぶさり、特に残響や距離感といった空間表現を悪化させる事があります。

OFFにした結果は予想通り。硬くタイトで刺激的な高域は自然な減衰に変わり、空間描写と低域の定位が格段によくなりました。

私は宗教上の理由でApple製品を持っていないのでAndroidでだけ設定方法を伝授します。

1. aptX CODECをOFFにする
Androidの場合、Bluetoothでペアリング中の機器の設定から「HDオーディオ: Qualcomm aptX TM オーディオ」をOFFにすることで完了します。

ちなみに、これをOFFにしたときの標準CODECは何になるのか、というメンションをTwitterでもらった気がします(?)が、結果は機種によります。
が、概ねAACになるのではないかと思います。
この標準CODECを切り替えるのが次項の設定です。

この手順完了後は一度接続し直したほうが良いです。
具体的には一旦ケースにFALCONを格納して、接続が切れてから再度取り出して再接続させてください。そしてaptXがOFFになっていることを確認してください。



2. 開発者モードで利用するCODECを強制的に固定する
Androidの場合、「開発者モード」という「開発者じゃなくても度々お世話になるモード」があります。

ここにある「Bluetooth オーディオコーデック」「AAC」「SBC」に変更することでどちらを使うか固定することができます。



私はSBCを選択していますが、AACとSBCでも音の傾向が認識できるレベルで変わるので、聴き比べてお好みに応じて利用して良いと思います。

ちなみに音だけならSBCがオススメできます。

映像の遅延を考慮するとAACがよいですが、個人的にNetflixやPrimeVideoを見ている限りではSBCでもそんなに違和感はありませんでした。
最近のムービーサービスってリップシンクをアプリ内でやってるんですかね?ワイヤレスイヤホンを使っていてそういえば違和感を感じたことってあまりないんですよね。

ゲームだとおそらく音ゲーやなにかに音でなにかに反応するものは厳しい気がしますが、音ゲーやらないので詳しくはわからないのでこのあたりは詳しい方に譲りたいと思います。

なお、各CODECに関する性能については次のサイトが詳しいです。
Audio over Bluetooth: most detailed information about profiles, codecs, and devices


完全ワイヤレスイヤホンの持病「左右の同期ズレ」を調べた

過去、AVIOTの完全ワイヤレスイヤホンのクラウドファンディングに参加してみたりしていました。

このときはSoCも新しくのファームウェアやアンテナ設計のノウハウ等があまりない時期だったこともあり、片耳を塞ぐことで左右間の通信が途切れることがありました。
これによって左右の同期ズレによるバッファ消化に差が発生し、左右で音の進み方が変わり「頭の中で音がぐるぐる回る」現象が起こっていました。
まだ人類に完全ワイヤレスは早かったんや...などと世の道理を嘆いたものです。

詳しくは過去の拙著記事をご覧ください。
バリュートレード社のAVIOT TE-D01bを買ったのでレビューがてらテストした【2018-11-30 追記】

今回、同様のテストをしてみました。

結論的には、当時よりも非常に発生しづらくなっているのですが、同期ズレが起こるタイミングはありました。これは無線通信である以上仕方ないことです。
しかも人間の身体は電波にとってまさに天敵です。

が、ファームウェアのバージョンが上がっているのか再同期しているようで1 - 2秒程度で左右の違和感がないレベルまで収まります。

PANが振られるような状態になっても焦らず慌てず少し待ちましょう。
勝手に復旧します。

まとめ

ハイ寄り(高域に振った音質)でがっかりした、と思われた方はぜひ接続するCODECやイヤーピースのフィッティングを調整してみてください。
非常に豊かな低域を感じられると思います。

あと非常に音源の差を表現するイヤホンです。良いソースは良く、良くないソースは良くなく表現してきます。
低域が足りない!というのはFALCONが狙っている低域帯に音が入っていない可能性があります。ジャンル的にこの辺というのもあるんですが争いの火種になるのでやめておきますが。

FALCONはODM、OEMが主流であるワイヤレスイヤホンでも、計測と数値と理論で詰めていけることを実行して見せた野心的な好例になったのではないでしょうか。

これから無線技術は更に進化していくでしょうし、バッテリーの小型化が進めば更に実装容量が増えていくでしょう。
いままで苦労してきた部分が苦労なく実装できるようになり、よりよい商品が出てくると思います。
そんなとき、またジョン・モールトン博士やNoble Audioが新しい例を見せてくれることをファンとして望んでいます。

完全ワイヤレスの戦国時代ではありますが、皆さんのより良い選択をする手伝いになればと思います。

余談

今、Android界隈ではSBCの拡張オーディオプロファイルである「SBC XQ - SBC Dual Channel mode with the eXtreme quality profile」の実装がサードバーティOS上で進んでいます。

私事ではありますが、現在手元の検証機が足りず、自端末向けにOSをBuild出来ていなくて私自身もテストが進んでいないのですが注目の機能です。いつかAndroid公式に合流することを望みたいですね。

Bluetooth SBC Dual Channel HD audio mode


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