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NobleAudioの完全ワイヤレスイヤホンFALCONはフラッグシップを音を持って産まれた?

「NobleAudioがワイヤレスイヤホンを発売する。」 これだけでイヤホンファン、オーオタ諸氏はドキっとしたことでしょう。 超高性能イヤホンメーカーが自社ハイエンドモデルの帯域バランスを元にワイヤレスイヤホンを本気で作ったようです。 このFALCON。結論を言うと過去所有していたワイヤレスイヤホン、ワイヤレスレシーバーを超える最高の出来、どちらが良いという感想にならないほどに 「NobleAudioが作ったNobleAudioのサウンドシグネチャを持ったワイヤレスイヤホン」 でした。 正直、同社初めてのワイヤレス、しかも完全ワイヤレス(英語圏だとTruelyWirelessと言ったりするらしい)こんなにNobleAudioの音になるとは思っていませんでした。 一言で言えば同社のフラッグシップモデル、KHANに非常によく似たバランスに元気さ・明るさを足したような音です。

Noble AudioのKHANを買ってわかったまさかの弱点と最高の音楽体験

Noble Audio - KHAN
米イヤホンメーカー、Noble Audio から新モデル KHAN が発売されました。
KeiserEncore、Katanaを上回るプライスで新たなフラッグシップとして紹介されています。

先行で販売されている海外での反応もよく、日本国内での販売を待ちわびる声も出始めた中、「フジヤエービック主催ヘッドホン祭 2019年春」で国内で初お目見えし日本国内での販売がアナウンスされました。

展示も大盛況で、常に行列が出来ていました。

このときの試聴は輸入代理店であるエミライが用意した音源を一旦聴き、その後自身の音源で視聴するというスタイルでした。

これは「まず先にKHANがプロモーションしたい音がある」ということだったようで KHAN の印象が音源によって大きく変わる可能性を示唆していたのは試聴時にも感じましたが、入手後の感想はそれがより強くなりました。


1. 結論

今回のレビューを最初にまとめますがもっとざっくりとした結論を書くと、

KHAN は聴く楽曲のジャンルというより、楽曲本体の出来によって評価が違うことが有りうるイヤホンです。

このレビューが参考になり、販売店やイベント等で聴く興味を持ってもらえるとイヤホン好きな皆さんや音楽好きの皆さんには納得してもらえるのではないかと思います。

特徴

  1. 音場が奥行き方向で超広い
  2. 明るい音ではあるけれどKaiser encoreのような煌びやかさでもなく、かといってKATANAのようなキレ味とも違っていて、現行モデルとの差別化が出来ている
  3. ピエゾドライバーが単体で聴くとちょっとザラザラしているのに音楽として聴くと生々しい不思議感覚を醸し出す
  4. 中低域、中高域を担当する2ユニット4機のBAドライバーが絶妙のバランスで色っぽさを出してくる
  5. フェースプレートの質感が映像の見た目よりも金属粉感があってかっこいい
  6. 音源によって印象が大きく変わる

注意点

  1. アンバランスだとダイナミックドライバーの深い低域がスポイルされる(全体のポップ感が薄く感じる)
  2. Lightning直挿しのイヤホンアダプタだとアダプタ側のアンプが発振してしまいノイズが出る

2. 装着感

耳の形や大きさにも寄るので個人差はあります。
  1. 現行モデルと比べてノズルが長くなって装着感が安定した
  2. ケーブルがそこそこ太く重さもあるのでイヤーフックの落ち着きが良い
  3. ハウジングが金属ではなくなったので大きさの割に軽い
  4.  10mmのドライバーが2個入っている割に「比較的」小さい

3. 音質

イヤーチップで音の雰囲気が結構変わる

標準で付いているのはシリコン2段キノコタイプとフォームタイプですが、普段使っていたシリコンシングルタイプを使ってみたところキツめの付帯音が出てしまい、高域がザラザラに聴こえまして。試聴機ってこんな歪んでなかったよね?というくらいに。

ひとまず同梱されているフォームタイプを使うと良いですが、白と黒でも感じが違うので悩ましいところです。

筐体のノズルが長いため、付属のウレタンフォームタイプでは全長が長くなってしまい結構耳から飛出た感もありますが、まあ自分からは見えていないのでいいかな、と。

シリコンタイプのイヤーチップでも、出口が狭まるタイプはちょっと付帯音がつく感じはします。それよりも出口の口径が広いタイプが良いかもしれません。
スパイラルドットみたいに敢えて反響を制御するタイプはどうなるのか未テストなので追々やってみたい気はします。

現時点の感想は、低域を出せるタイプのイヤーチップが概ね良好なのでこの方向が良いのかな、という気がしています。

ちなみにヘッドホン祭で使われていたのは口径の大きいシリコンの二段フランジタイプでした。こちらを標準で選んでも良いかもしれません。

音の傾向はまさにツイーターを追加設置したスピーカー

全体がフラット、奥行きに広い音場です。
見通しがよく、音に説得力があり、空間は音で誇張なく充填されます。

高域
ピエゾドライバーをツイーターに置くため、出音は非常に鮮烈です。が、厳しい強烈さではなく中高域との調和を考えた絶妙なセッティングになっています。
ピエゾ素子スピーカーといえばブザー音とかを連想してしまうためか、あの甲高い歪みの塊をイメージしがちですが、ここを落とし所にしてくるあたりがまさに Noble Audio ですし Wizerd です。

KHAN の特徴の多くはここのセッティングが生み出したと言えるのでは無いでしょうか。
特に高域成分を多く含む楽器、打楽器は反響を繰り返し消え入りそうな部分までしっかりと再現します。

BAドライバーの担当範囲が広いこともあり、BAが担当する音楽成分とうまく融合し、音に明確な輪郭を与え説得力を持たせているように思います。
その結果が反響や振動が再現された高い空間表現につながっているのでしょう。

中域
BAドライバーがメインで担当している領域です。中高用BAが2機、中低用BAが2機のマルチユニット、マルチドライバータイプです。
非常に解像感の高い、音離れが非常によく、癖のない音です。

音は手前に近く、極端に濃いぴらみっどバランスにもしていないため、フラットでありつつも適度な濃さで目立たないですが非常に凝った音作りだと感じます。
この付近の音が近いこと、ピエゾドライバーの音が反響音や周囲の環境音を再現することから、相対的に距離を感じて奥行き方向に深い音場を感じるのでしょう。

そして、ここが KHAN が音源によって表情が変わる(評価が変わる)部分の一端でもある気がします。
中高域からツイーターに係る付近の音を強く持ち上げた音作りをされた楽曲は距離感のバランスが崩れてしまい、眼の前で鳴るように聴こえるものがあります。

どうしても KHAN はピエゾドライバーというキラーユニットがあるため注目されにくそうですが、Noble Audio といえばBAドライバーチューニングと言っても過言ではないほどです。
今回も他聞に漏れず、上にはピエゾドライバー、下にはダイナミックドライバーというじゃじゃ馬をきっちり抑え、まとめ上げてくるあたりはまさに真骨頂ですね。

低域
KHAN が持つ安定感、安心感はこの特徴的な低域が担っています。とはいえ厚さを誇張していることも、全体のエッジを甘くしてしまうヘビーさではありません。

ダイナミックドライバーが制御する重低域がほんの少し持ち上がり音楽全体に下支えを入れます。ドラムのキックが圧縮する空気、ベースがゆっくり震わせる空気を表現します。
BAドライバーが担当する低域はとてもよく制御されていて、応答の速い正確な低域を楽曲内の空間に充填します。

反面、重低域が収録されていない楽曲では全体のフラットさと輪郭がはっきりした中高域のため、全体的に痩せた賑やかすぎる曲のように感じさせます。
そういう意味では、本機が本領を発揮するためには楽曲を選ぶイヤホンであることは間違いないようです。

バランス接続をした場合にもっと効果的が現れるのがこの低域部分ではないかと感じます。

空間(音場)
非常に広い空間を作ります。

BAドライバーの音が手前で適度な厚みを持って鳴るため、重低域による空間の下支えとツイーターが表現する輪郭付けも相まって音同士の相対的な距離感が明確になり、広さを持った場を形成します。


4. 試聴環境とジャンル

試聴環境

視聴環境は基本的に Fiio X7ii をDAC兼プレイヤーとして使用しました。
Fiio X7ii + AM3C + KHAN

ポータブル環境として AM3C 、据え置き環境として HeadAmp GilmoreLite mk2 を使用しています。

- プレイヤー
    - Fiio X7ii CustomFirmware Ver

- ヘッドホンアンプ
    - Fiio AM3C
    - Headamp Gilmore lite mk2

試聴に使ったジャンルと楽曲

ジャンル別に、というほどではないですが今回のレビューにあたって使用した楽曲群から特徴的なものをピックアップしました。

細かいことを聴くために手元の音源と据え置きのヘッドホンアンプを使いましたが、今回の多くはSpotifyから探しました。


Jazz, Fusion
- Acoustic Alchemy / Thirty Three and a Third - Carmen's Man
- Frog of fog / Frog way back - dialogue
- Massimo Farao Trio / Moldau players classics - 悲愴

Metal
- Nozomu Wakai's DESTINIA / METAL SOULS - Metal Souls
- Sonata Archtica / The Harvests - FullMoon 2014Version
- Children Of Bodom / Hexed - Platitudes And Barren Words

Anime, Pop
- フランシュシュ / 徒花ネクロマンシー - 徒花ネクロマンシー
- ASCA / RESISTER (Special Edition) - RESISTER
- Mili / Within - Within
- 三月のパンタシア / ガールズブルー・ハッピーサッド - コラージュ
- Pentatonix / Pentatonix(Japan Super Edition) - Perfume Medley

注意事項

バランスとアンバランスで音の厚みと深みが結構変わる

このKHAN、アンバランス接続とバランス接続では音の厚みが変わります。
特に低域の沈み込みで大きな違いを感じます。

ノーマルケーブルの場合に感じることのあった「明瞭で見通しが良くてフラットなのにどこか物足りない」感じは一気に消え去ります。

低域が弾むようになり躍動感に溢れ、中高域が支配的で音の近かった楽曲であっても低域が支え、厚みを持ったピラミッドバランスに整え直し、色艶を与えます。
全体のバランスが整うことで KHAN 特有の広い空間になります。

純正ケーブルの出来がそこそこ良いので、これを4.4mm 5極 バランスに改造したいですね。

iOS機純正Lightningイヤホンアダプタのアンプが発振する?

iOS端末に付属しているLightningイヤホンアダプタ経由では「ざーーーーーーーーーー」というノイズが乗ります。
海外で先行していた情報があったため、ヘッドホン祭で試してみたのですが、確かにノイズが乗ります。

スマートフォン直挿しとUSB-Cアダプタ経由でも何台かテストしましたが、iOS付属のLightningイヤホンアダプタだけで再現します。

音の感じからするとアンプ回路が発振しているような音がするので多分アダプタ側との相性が良くないのでしょう。