2013/04/24に発表されたJVC社のヘッドホン、HA-SZ1000とHA-SZ2000の試聴をしてきました。
ヘッドホンとしては珍しい(初?)構造のヘッドホンで、HA-FXZ100、HA-FXZ200に続くライブビートシステムの第二弾として発売されます。
そのヘッドホンの聞き比べが出来るということでITMedia主催のブロガーイベントに応募していました。
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左 HA-SZ1000 右 HA-SZ2000 |
このHA-SZ1000とHA-SZ2000の両機は、JVCが謳う原音再生を目指すための新たな試みとして送り出したとのことです。
JVCのヘッドホンといえば最近はカーボンナノチューブを使用した振動板で、低音の再生を重視したという事が同社の商品紹介にも書かれています。
今回の両機もカーボン振動板、カーボンナノチューブ振動板を使った製品です。
正直なところ、これら製品には低音の表現は今回の2機種を聴く限りではひどく誤解をしていました。
低音の再生を重視ではなくて、低音も再生したいということを、今まで培った技術と新しい挑戦の中で見つけ出したと言ったところでしょうか。
細かな仕様はメーカーの説明をご覧いただくとして、今回の主催であるITMedia誌でもプレス発表の内容がまとめられています。あわせてこちらを参照ください。
両機を使ってみた感想
外観・装着感
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上段 左 HA-SZ1000 右 HA-SZ2000
下段 左 Sony MDR-1R 右 AKG K450 |
両機はポータブルを謳っています。が、一見据え置きにしか見えない大きさです。
JVCの皆さんは頑として譲らないポータブルと言い切るスタイルに感服いたしました。。。
いやまあ、
折り畳めて展開時よりも30%小さくなればそりゃバッグには入るのでポータブルといえばポータブル
ですけども。持ち運び出来ますし。
装着感ですがヘッドホンとしては結構な重量感です。重量感ですというか重いです。
ヘッドバンドの締めも強かったので、側圧は高めなのかな?と思っていましたが、パッド部分の作りが非常によく左右からの強い圧迫感はさほど感じませんでした。
特にSZ2000の合成皮革なのに肌触りも良くもっちりしっとりした感じでした。
ちなみに装着したまま下を向いて曲に集中していたら首が少し疲れますが、普通に聞いていて重量感を感じないのは頭頂部、パッドと上手に重量が分散されているからでしょう。
ヘッドバンキングはちょっとしたトレーニングになりそうです。
激しいのだと飛んでくのでほどほどに。
ケーブルは両機とも左出しの1.2m。着脱式ではなく、ご家庭使用としては非常に短いです。
本製品はポータブルですから、、、ということですが。。。ふむ。。。
HA-SZ1000ではOFC線
HA-SZ2000では銀コートOFC線
を使っています。
ちなみに、個人的にケーブルの着脱についてお話を伺ったところ、
ケーブルの着脱は製品の企画段階でテーブルに登りました。
長いケーブルに交換したい、別な素材を使ってみたいというご要望も有ろうかと思いますが、本製品のコンセプトである原音再生という部分を考えると、電気的な接点は増えるだけ信号の劣化につながるため極力少なくしたかったことが大きな判断基準でした。
中でもSZ2000では銀コートOFC線を使って差別化をしています。これは外に出ているケーブルだけでなく、内部で使用している配線も含めて銀コートOFC線を使っていることを指しています。
ヘッドホン本体からケーブルの先端に付いているフォンプラグまで、これがSZ1000、SZ2000というパッケージなので、是非ともこのパッケージを皆さんに聴いて頂きたいです。
という熱い回答をいただきました。
試聴感
両機ともコンセプトは同じのようで、音の出し方も似ているように感じました。
- ダイナミックのデュアルだからこそ出来る低音と中高音の分離
- 音としての低音ではなく空気の振動としての低音
低音域は 二つあるドライバーのうち、低音用の55mmドライバユニットが専用で鳴らしています。
また、併せて今回新しく採用したデュアル
バスレフ方式と
ケルトン方式が低音の抽出に強く貢献しているようで、バスドラムやベースが生み出す、深く沈み込み振動する空気が印象的でした。
全体的に重厚感のある音作りですが、ボンボンとした低音ではないのでその他の楽器や声を邪魔することなく音場の土台を作り上げています。
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カットモデル@SZ1000
チャンバーが複数なので部品数が多い |
中高音域は二つあるドライバーのうち、中高音用の30mmドライバユニットが専用で鳴らしています。
両機でそれぞれ差が有りながらも方向性はよく似ていると感じました。
低音からよく分離された中音と、鋭く伸びやかですが刺さることなく鳴る高音は、今回の構造によって低音と中高音がしっかりと分けられて互いの干渉を抑えたことが最大の恩恵のようです。
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クロスオーバーの説明 |
この低音域と中高音域2つドライバーは、互いに担当する部分を邪魔しないよう、それぞれの分野の音は減衰させているとのことです。
なお、クロスオーバー周波数は300Hzとのことで、トータルでフラットな特性になるよう調整できたのではないかとのことでした。
JVC三浦氏の余談で、
実は最初にケルトン方式だけの試作を試してみたが、全然中高音がカットできていなかった。
これを更にカットするため、チャンバー(部屋)を2つにしてそれぞれをバスレフで結ぶダブルバスレフにできないか挑戦した。
第一部屋でカット出来なかった中高音を、ダクトを通して第二部屋に通し更にカットした。
イヤホンの方では0.4mmという注射針のようなダクトを利用したが、今回は4mmから8mm。
これはチャンバーを2つにしたことと耳を覆い隠すヘッドホンであることで、振動させる空気の量が単純に多くなったから。
というお話からも今回の構造的な苦労と製品を作る高い意欲が伺えますね。
個々製品の試聴感
HA-SZ1000
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HA-SZ1000 装着@ダミーヘッド |
低音寄りでしょうか。
中高音も出ていますが、ちょっと頑張っている感はあります。
女性Voは一歩離れ気味でちょっと詰まった感じがあり、その周囲から音が回り込んでいて前に出てこれないように聞こえました。
高音は少し頭打ち気味で抜けきらない感じはありますが不自然なところはなかったです。
音場は左右で少し狭めで、奥行きは狭さを感じないです。
音の数が少なくて各楽器の音が明瞭に聞こえてくる音楽、例えばジャズやフュージョンだったりは詰まり感を感じますが、メタルを聴いていると低音と震える空気感が非常に心地よいです。
HA-SZ2000
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HA-SZ2000@ダミーヘッド |
フラット、と言って良いでしょうか。
低音も高音も明瞭で中音もSZ1000より出ているのでそういう印象を受けました。
パッと聞いた感じでは低音のすっきり具合が気になりますが、これは低音と中音の分離が良いこと、中音域がSZ1000よりもよく出ていることで相対的にそう感じたようです。
高音はSZ1000よりも伸びやかで良く抜ける感じがします。
今回の試聴では、この2点がSZ1000との大きな差であるように感じました。
このあたりは材質や構造上の差別化が効果を発揮したところでしょうか。
ハイハットのような金属音が少し遠くにあるため、中音と定位の良い低音も相まって音場は奥行き方向で広く感じます。開放型のような広さはありませんが狭さも感じません。
芯のある重低音を基音に沈み込む低音がありますが、ただ低音だけを強調して鳴らしたということではなく、音楽の土台として低音を出しそれらが他の音の邪魔をしないのは、基本コンセプトの通りのようです。
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SZ1000のドライバホルダ 樹脂製で制振用に銅テープが貼られている |
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SZ2000のドライバホルダ 樹脂製のホルダが真鍮の筒で覆われている |
終わりに
会場では一人一人に新製品のHA-SZ1000、HA-SZ2000が一台ずつ貸し出され、完全な貸切状態で試聴出来ました。
JVCの皆さん、企画のITmediaの皆さんありがとうございました。
贅沢を承知でいうと願わくばもっと聴きたかったです。
そんな気にさせる両機は、また物欲を刺激する厄介なヘッドホンが現れたものだ、と早速悩みの種になっています。
煽り記事を書いたつもりが自分が煽られてるんじゃないの?
などと、現地でご一緒した
コムギドットネットのくろぺんさんに煽られつつ、またしばらくの間HA-SZ2000に思いを馳せたいと思います。
ほしいなー、これ。
ちょっとONKYOさんのヘッドホン聴いてから決めたいんだけどなー。
ちなみに、JVCさんのオンイヤータイプのポータブルも気になってます。
両出しケーブルで改造しやすそうよね的な意味も含めて。
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AV評論家・潮晴男氏とJVCの皆さん |
# 余談
ちょっと面白いものを見つけました。
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左 iBasso D12 中 GalaxyS3 右 iRiver AK100 |
GalaxyS3をiBasso D12でUSB接続したものです。
そう、この記事でやったことでした。
持ち運ぶにはケーブルの出方が邪魔なのですがそういうのを回避するジャケットとかが出たらこれはこれで一つのスタイルになりそうな気はします。
Androidだってデジタル転送で音楽が聴けるんだよ!
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